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社会学に触れる25冊 : 5人の教員の「私の5冊」(スターブックス シリーズpart.2)

2018年3月13日   スターブックス

明星大学図書館「スターブックス」シリーズpart.2
人文学部人間社会学科推薦!
社会学に触れる25冊 :5人の教員の「私の5冊」

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  読書には、登山にも似て、読者それぞれの技量に応じた良書がある。登山技術や体力を無視していきなりアルプスやヒマラヤに挑んでも遭難が不可避のように、いきなり古典を読破しようとしても、厚い壁にぶちあたって読了することすらおぼつかない。

 まず高尾山級の初級編として皆さんにお薦めしたいのは、『漱石文明論集』(岩波文庫)である。この論集の中には漱石が大正3年に学習院大学で行った講演録、「私の個人主義」が収録されており、将来社会のエリートとなる学生の心得が述べられている。
 なお、ここでいう「エリート」とはけっして、俗にいう偏差値の高い大学を卒業した人を意味するわけではない。スペインの思想家、オルテガ・イ・ガジェットによれば、高い学歴にあぐらをかいて「精神なき専門人」として一生を終えるひとはむしろ「大衆」といわざるをえない。
 真のエリートとは何か、それを知りたいひとは直接、ガジェットの名著『大衆の反逆』(ちくま学芸文庫)に当たってほしい。

 高尾山、丹沢を踏破したので、そろそろ日本三大アルプスや谷川岳に挑戦する読者を想定した名著を紹介したい。中級編として私がお薦めするのは、民俗学者、柳田國男が昭和5年に著した『明治大正史 世相篇』(講談社学術文庫)である。本書は、明治維新以来の近代化が庶民の生活に与えた影響を、衣食住の変化からまず紐解き、近代化によって日本人の生活様式の何が変わり、また何が変わらなかったのかを明らかにしている。
 柳田が本書を執筆した背景には、大正末期に成立した普通選挙法によって国民の多くが参政権を手に入れ、そのことによって近い将来大きな混乱が生じるのではないかとする、真のエリートとしての柳田の危惧があった。同じ頃、海を遠く隔てた大英帝国では、大恐慌によって危機に瀕した資本主義を救うべく、ひとりの若い経済学者が悪戦苦闘していた。

 その経済学者とはほかでもないジョン・メイナード・ケインズであるが、彼は1936年に『雇用、利子、貨幣に関する一般理論』(岩波文庫)を公刊し、その中で資本主義社会が恐慌を二度と繰り返さないための処方箋を描いている。本書は、初学者の君たちにとって、アイガー北壁やエベレストにも匹敵する難解な専門書といえる。だが、将来ぜひ一度は挑戦してほしい名著でもある。「所有と経営との分離」によって、資本家階級が2つの階級に分かれたことで、金利生活者としての資本家の利害が、経営者とそのもとで働く労働者階級の利害と鋭く対立することを本書は明らかにしている。流動性選好論が資本家の行動を、投資の限界効率論が経営者の行動を、そして限界消費性向論が労働者階級の行動をそれぞれ解明していることを理解するとき、本書が優れた経済理論書であるとともに、優れた社会学の古典でもあることにわれわれは思い当たるのである。

 最後に、ケインズの一般理論が社会科学の分野における20世紀を知る最良の古典であるとすれば、カール・マルクスの『資本論』は19世紀の社会を知る最良の古典である。同じく初学者にはとても歯が立たない古典であるが、一度はその高みに立った絶景を眺望することをお薦めしたい。

(文:下平好博)

『漱石文明論集』

夏目漱石【著】 ワイド版岩波文庫

漱石の苦闘の跡を示す『現代日本の開化』『私の個人主義』などの講演記録を中心に、日記・断片・書簡を収録する。

(推薦:下平好博)

『大衆の反逆』

オルテガ.y.G.【著】 ちくま学芸文庫

1930年刊行の大衆社会論の嚆矢。「生・理性」の哲学によってみちびかれた、予言と警世の書。

(推薦:下平好博)

『明治大正史 -世相篇』

柳田國男【著】 講談社学術文庫

明治大正の日本人の暮し方、生き方を、民俗学的方法によって描き出した画期的な世相史。

(推薦:下平好博)

『雇用, 利子および貨幣の一般理論』上,下

ケインズ【著】 ワイド版岩波文庫

経済学の歴史に「ケインズ革命」と呼ばれる一大転機を画した書。現代経済学の出発点

(推薦:下平好博)

『資本論』第一巻 上,下

マルクス【著】 マルクス・コレクション4-5

西欧2500年の歴史のなかで初めて、社会の存立構造を体系的に厳密に解明した画期的著作

(推薦:下平好博)

『命題コレクション 社会学』

作田啓一, 井上俊【編】 ちくま学芸文庫

「社会学って何を勉強するんですか?」と聞かれることがよくあります。あれこれ説明しても、「すっきり納得!」という相手の顔を見ることはまれで、社会学を理解してもらうことの難しさを感じます。この本は、社会学で議論されてきた50のキーワードと命題(「AはBである」)が紹介され、そこから社会学の具体的なイメージを描いてもらうことにより社会学の世界へ案内するという目的でまとめられたものです。入門書としては、難しい部分もありますが、ぜひご一読を!

(推薦文:元治恵子)

『職業社會學』

尾高邦雄【著】

 

尾高邦雄(1908-1993):
社会学者。産業社会学を確立。社会を定点観測するSSM調査を創始した。

(推薦:元治恵子)

『生き方の不平等 -お互いさまの社会に向けて』

白波瀬佐和子【著】

生き方の不平等をなくしていく道を「お互いさまの社会」の創出に見出してゆく。

(推薦:元治恵子)

『学歴・競争・人生 -10代のいま知っておくべきこと』

吉川徹,中村高康【著】

学校では絶対に教えてくれない“人生ゲーム”のルールを説明しよう。

(推薦:元治恵子)

『大人になるためのリベラルアーツ -思考演習12題』

石井洋二郎,藤垣裕子【著】

異なる専門や価値観をもつ他者との対話をとおして真の「大人」になるための思考力を鍛える。

(推薦:元治恵子)

『搾取される若者たち -バイク便ライダーは見た!』

阿部真大【著】 集英社新書

本書は労働社会学や社会調査に興味のある人にぜひ手に取ってもらいたい一冊です。近年、非正規労働者の比率は4割に達しています。そんな中、一年近くバイク便ライダーとして働いた経験をもとにこの本は書かれました。「労災保険」もおりない「究極の不安定就業者」である請負契約の「歩合ライダー」に若者が憧れるメカニズムと危険性が、ライダーの目線から活き活きと描かれています。

(推薦文:鵜沢由美子)

『社会学がわかる事典 -読みこなし使いこなし活用自在』

森下伸也【著】

社会学の基本から最新学説までを、どの本よりもわかりやすく解説。

(推薦:鵜沢由美子)

『企業のなかの男と女 -女性が増えれば職場が変わる』

R.M.カンター【著】

組織における多数派と少数派の形成と、それぞれの行動様式を構造的にアプローチ。

(推薦:鵜沢由美子)

『失敗の本質 -日本軍の組織論的研究』

戸部良一【著】 中公文庫

序章:日本軍の失敗から何を学ぶか,
第1章:失敗の事例研究,
第2章:失敗の本質,
第3章:失敗の教訓

(推薦:鵜沢由美子)

『図解 きほんからわかる「リーダーシップ」理論』

池田光【編著】; 中西孝二, 栗原晴生, 田中初正【著】

わかっているようで、なかなか実践できない“ビジネス理論”を完全図解化。14のキーワード。

(推薦:鵜沢由美子)

『今どきコトバ事情 -現代社会学単語帳』

井上俊, 永井良和【編著】

社会学は身近な現象について深く考える学問分野です。深く考えるためには、その「現象」がなんであるかをハッキリさせる必要があります。つまりは「定義する」ということです。この本は、「アイドル」「自宅警備員」「コミュ力」などを取り上げ、コトバの定義を確認しながら、社会学的に考えるための入り口を示してくれています。

(推薦文:寺田征也)

『生きづらさの自己表現 -アートによってよみがえる「生」』

藤澤三佳【著】

生きづらさを抱えた人々の自己表現は、新たな社会とのかかわりを生み出し、表現者に「生」をよみがえらせる。

(推薦:寺田征也)

『釜ケ崎から -貧困と野宿の日本』

生田武志【著】 ちくま文庫

野宿者支援に携わってきた著者が、大阪の暗部に肉薄する圧倒的なルポルタージュ。

(推薦:寺田征也)

『モノの意味 -大切な物の心理学』

M.チクセントミハイ,E.ロックバーグ=ハルトン【著】

第1章:人間と物,
第2章:物は何のためにあるか,
第3章:家の中でもっとも大切にしている物,・・・(全9章)

(推薦:寺田征也)

『日常的実践のポイエティーク』

M.セルトー【著】 ポリロゴス叢書

フランスの異色の歴史家セルトーによる民衆史、社会文化論。カルチュラル・スタディーズの先取りとも評される書。

(推薦:寺田征也)

『モモ-時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語』

M.エンデ【著】 愛蔵版

時間どろぼうと ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語。

(推薦:渡戸一郎)

『蒼氓(そうぼう)』

石川達三【著】 新潮文庫

石川達三の初期代表作の一つ。昭和5年に移民団に投じブラジルへ渡った自身の経験をもとにして執筆された。

(推薦:渡戸一郎)

『在日外国人 -法の壁、心の溝』第三版

田中宏【著】 岩波新書

最新のデータとともに、入管法の大幅「改正」のほか、高校の無償化など外国人学校をめぐる問題についても語る。

(推薦:渡戸一郎)

『ストリート・コーナー・ソサエティ』

W・F・ホワイト【著】

都市エスノグラフィーの古典。大幅に増補改訂された「アペンディクス」は、大いなる示唆に富む。

(推薦:渡戸一郎)

『都市的世界/コミュニティ/エスニシティ -ポストメトロポリス期の都市エスノグラフィ集成』

渡戸一郎, 広田康生, 田嶋淳子【編著】

都市的世界と都市コミュニティに関する最前線の問題提起とエスノグラフィックな研究論集

(推薦:渡戸一郎)

 まずは私たちが生きる近代社会を問い直す優れた児童文学から1冊。ミヒャエル・エンデ(大島かおり訳)『モモ』岩波書店(原作1973年、邦訳1976年)。近代的な時間(クロック・タイム)によって奪われたものは何かを考えるきっかけにしてほしい。

 次は、人の越境移動について2冊。1冊目は石川達三の小説『蒼氓』(昭和10年の第一回芥川賞受賞作品。新潮文庫に所収)。日本は戦前まで移民の送り出し国だったが、この小説は、1930(昭和5)年、ブラジルに向かう日本人移民たちの様子を、神戸港出港直前からブラジル到着後の入植まで生き生きと描いている。
 2冊目は田中宏『在日外国人――法の壁、心の壁 第三版』岩波新書、2013年。戦後日本における外国人をめぐる問題の広がりと深さを理解するための好書。著者の体験を織り交ぜながら、日本社会のあり方を鋭く問うている。

 最後の2冊は都市社会学の本を紹介しよう。まず私が2000年代に繰り返しゼミで取り上げた都市社会学の古典のひとつ、W.F.ホワイト(奥田道大・有里典三訳)『ストリート・コーナー・ソサエティ』(有斐閣、2000年)。米国ボストンのイタリア人コミュニティの二世の若者グループの参与観察を通じて、「スラム」とみなされていた地域に実は一定の社会秩序が作られていることを描き出した。2冊目は私の共編著。渡戸一郎・広田康生・田嶋淳子編『都市的世界/コミュニティ/エスニシティ』明石書店、2003年。世紀転換期の都市社会の諸相をフィールドワークによって描くエスノグラフィ集成。「越境移動者と都市」に焦点がある。

(文:渡戸一郎)

※書籍の内容および目次情報は各書籍とCiNiiBooksを、人物情報はJapanKnowledgeを参照・引用しました。

 

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